2026年10月 最新改正情報
デジタル化・省エネルギー投資等に関する税制優遇措置を拡充
システム導入費用の2倍の損金算入、設備投資の追加控除、源泉徴収税率の軽減など
タイ政府は、企業のデジタル化、省エネルギー投資、電子税務システムの普及および国内展示会への出展促進を目的として、複数の税制優遇措置を導入・延長しました。
2026年9月30日には、歳入局長告示(所得税)第469号、第470号および第471号が公布され、中小企業のデジタル化投資、住宅用太陽光発電設備の設置、省エネルギー設備への投資に関する具体的な適用条件が定められました。
また、2026年10月には、電子税務システムへの投資費用に対する税制優遇措置の延長や、e-Withholding Taxを利用した場合の源泉徴収税率の軽減措置が公布されたほか、国内展示会・見本市への出展費用に関する新たな税制優遇措置が閣議承認されています。
これらの措置は、タイに進出する日系企業にとって、設備投資やシステム導入に伴う税負担の軽減につながる可能性があります。
主な税制優遇措置の概要
| 税制優遇措置 | 主な優遇内容 | 適用期間 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 中小企業のデジタル化支援 | ソフトウェア等の対象支出について100%の追加損金算入(年間上限30万バーツ) | 2025年6月24日~ 2027年12月31日 |
| 2 | 電子税務システム導入支援 | E-Tax Invoice・E-Withholding Tax関連費用の2倍相当額の損金算入 | 2026年1月1日~ 2027年12月31日 |
| 3 | E-Withholding Taxの税率軽減 | 対象となる源泉徴収税率を1%に軽減 | 2026年1月1日~ 2027年12月31日 |
| 4 | 省エネルギー設備への投資支援 | 対象設備への投資額の50%相当額を追加控除 | 2026年3月3日~ 2028年12月31日 |
| 5 | 国内展示会・見本市への出展支援 | 対象出展費用の2倍相当額の損金算入(予定) | 2026年10月6日~ 2027年12月31日(予定) |
1. 中小企業のデジタル化支援に関する税制優遇措置
根拠法令:勅令第802号、歳入局長告示(所得税)第469号
タイ政府は、中小企業(SMEs)のデジタル化を促進するため、一定の条件を満たすソフトウェア、スマートデバイス、デジタルサービス等の導入費用について、通常の損金算入に加えて支出額の100%相当額を追加で損金算入できる制度を導入しました。
追加損金算入額は、1会計年度につき最大300,000バーツとなります。
対象となる企業は、会計年度末時点の払込資本金が500万バーツ以下であり、かつ年間売上高が3,000万バーツ以下の法人です。
対象費用には、企業の業務管理に使用するソフトウェアの購入・開発委託費用、対象となるスマートデバイスの購入費用、ソフトウェア利用料、デジタルプラットフォームのサービス利用料などが含まれます。
ただし、対象となる製品・サービスについては、デジタル経済振興庁(DEPA)への登録や、ソフトウェアのタイ国内開発などの要件を満たす必要があります。一般的なコンピューターの購入費用や年間保守料などは、原則として対象外となります。
また、BOI等による法人所得税免除の対象事業に使用する資産・サービスについては、適用が制限される場合があります。
2. 電子税務システムへの投資に対する税制優遇措置の延長
根拠法令:勅令第808号
タイ政府は、e-Tax Invoice & e-Receiptおよびe-Withholding Taxの導入・利用を促進するため、電子税務システムへの投資費用や関連サービス利用料に対する税制優遇措置を2027年12月31日まで延長しました。
本措置では、一定の条件を満たす法人について、対象費用の2倍相当額を法人所得税の計算上、損金算入することが認められます。
主な対象費用は以下のとおりです。
- e-Tax Invoice・e-Receiptの作成、送受信、保存に必要なシステムへの投資費用
- e-Withholding Taxの利用に必要なシステムへの投資費用
- 電子タックスインボイス等の作成・保存サービス利用料
- 電子源泉徴収税の納付に関するサービス利用料
- 電子税務サービス提供事業者が支払う一定のシステム評価費用
設備投資については、新品かつ未使用の資産であること、タイ国内に所在すること、一定期間継続して使用することなどの条件があります。
また、同一資産について他の税制優遇措置との重複適用は原則として認められません。
3. e-Withholding Tax利用時の源泉徴収税率1%への軽減措置
根拠法令:省令第402号
タイ政府は、e-Withholding Taxシステムの利用を促進するため、同システムを通じた一定の支払いについて、通常の源泉徴収税率5%・3%・2%を1%に軽減する措置を2027年12月31日まで延長しました。
対象となる主な支払いには、サービス料、専門サービス報酬、請負契約に基づく報酬、賃借料などが含まれます。
例えば、通常3%の源泉徴収税が適用されるサービス料100,000バーツについて、e-Withholding Taxを利用して支払う場合、源泉徴収税額は3,000バーツから1,000バーツに軽減されます。
本措置は源泉徴収時の税率を軽減するものであり、支払先の最終的な法人所得税率や個人所得税率を引き下げるものではありません。
一方、源泉徴収税額が減少することで、支払先企業における源泉徴収税の還付負担の軽減や資金繰りの改善につながる可能性があります。
なお、軽減税率の適用には、金融機関を通じたe-Withholding Taxシステムによる支払いなど、所定の条件を満たす必要があります。
4. 省エネルギー設備への投資に対する税制優遇措置
根拠法令:勅令第805号、歳入局長告示(所得税)第471号
タイ政府は、省エネルギー性能の高い機械・設備等への投資を促進するため、一定の条件を満たす設備投資について、投資額の50%相当額を追加で所得税の課税対象から控除できる制度を導入しました。
対象者は法人および一定の個人事業者です。
対象となる資産は、省エネルギー性能の高い機械・設備、または省エネルギーに寄与する材料・設備であり、以下の主な条件を満たす必要があります。
- タイの代替エネルギー開発・省エネルギー局(DEDE)またはタイ発電公社(EGAT)による省エネルギー性能5つ星の認証を受けていること
- 新品かつ未使用の資産であること
- 税務上の減価償却・償却の対象となる資産であること
- タイ国内に所在すること
- 2026年3月3日から2028年12月31日までの期間に契約および支払いが行われ、2028年12月31日までに取得し、使用可能な状態となっていること
また、対象資産の購入に際しては、所定の記載事項を満たした電子タックスインボイス(e-Tax Invoice)を取得する必要があります。
法人については、原則として対象資産の減価償却を開始する会計年度に税制優遇を適用します。
本措置は、タイ国内で工場設備の更新や省エネルギー投資を検討する日系製造業にとって、税務負担の軽減につながる可能性があります。
5. 国内展示会・見本市への出展費用に対する税制優遇措置(閣議承認)
タイ政府は、2026年10月6日の閣議において、国内の展示会・見本市への企業の参加を促進するため、出展費用に対する税制優遇措置を承認しました。
本措置は、MICE産業(会議、報奨旅行、国際会議、展示会等)の振興を目的とするもので、タイ国内で開催される展示会・見本市等への出展に係る対象費用について、支出額の2倍相当額を法人所得税の計算上、損金算入できる制度です。
対象となる費用は、主に展示会・見本市等の出展スペース賃借料および参加に係るサービス料です。
適用期間は、2026年10月6日から2027年12月31日までが予定されています。
なお、本措置は現時点では閣議承認段階であり、関連する勅令および歳入局長告示の公布を待つ必要があります。
日系企業における実務上の留意点
今回の一連の税制優遇措置は、タイ国内でシステム導入、設備更新、省エネルギー投資、展示会への出展などを検討している日系企業にとって、税務負担の軽減につながる可能性があります。
特に、次の点に留意する必要があります。
- 対象となる設備・サービスの事前確認
ソフトウェアや省エネルギー設備については、DEPA登録や省エネルギー性能認証など、所定の要件を満たす必要があります。 - 税制優遇措置の重複適用
同一の資産や費用について、複数の税制優遇措置を重複して適用できない場合があります。また、BOIによる法人所得税免除の対象事業に使用する資産については、適用が制限される場合があります。 - 必要書類の取得・保存
e-Tax Invoice、設備の認証書類、契約書、支払証憑、設備の使用開始日を確認できる資料など、制度ごとに定められた書類を適切に取得・保存することが重要です。 - 会計処理と税務上の追加控除の区別
固定資産として計上する設備やソフトウェアについては、会計上の減価償却・償却処理と、税務上の追加控除を区別して取り扱う必要があります。
また、各制度によって対象となる支出期間、資産の使用開始期限、控除を適用する会計年度が異なるため、投資計画の段階から適用要件を確認することが推奨されます。
まとめ
タイ政府は、企業のデジタル化、省エネルギー投資、電子税務システムの普及などを促進するため、複数の税制優遇措置を導入・延長しています。
これらの制度を活用することで、対象となるシステム導入費用や設備投資について、通常の損金算入に加えた追加控除や、源泉徴収税率の軽減を受けられる可能性があります。
一方で、対象企業・対象資産・適用期間・必要書類等の要件は制度ごとに異なります。 タイ国内で設備投資やシステム導入を予定している企業は、投資実行前に関連法令および適用条件を確認することが重要です。
※本記事は、2026年10月27日時点で公表されている法令およびタイ政府・歳入局の公表情報等に基づいて作成しています。実際の税務上の取扱いについては、個別の事実関係および関連法令に基づく確認が必要です。
―免責事項―
本記事の内容は、掲載時点の法令等に基づいて作成しております。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の会計・税務・法務その他の専門的助言を提供するものではありません。会計・税務・法務に関する具体的な取扱いについては、個別の状況に応じてご相談ください。
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