Contact

【解説】第3回 タイで働く人の個人所得税

2024.06.19
会計・税務

1.タイの居住者・非居住者

 タイ歳入法において、居住者の定義は暦年でタイ国内に合計180日以上滞在した者と規定されています。この滞在日数のカウントには、就業に限らず観光などでの入国日数も含み、ビザの有無は問いません。居住者に該当しない方は非居住者となります。

 居住者の場合、タイで就業することにより得た給与等(タイ国内源泉所得)に加え、他国で得ている不動産賃貸収入、利子所得など、タイ国外で得て(タイ国外源泉所得)、かつタイへ持ち込んだ所得が個人所得税の申告対象となります。日本の居住者とは異なり、タイの居住者はタイにおいて全世界所得を申告することは求められていません。駐在員、現地採用の方のほとんどは、タイの居住者に該当することになります。

 非居住者に該当する場合、タイ国内源泉所得のみが、タイにおける個人所得税の申告対象となります。

まとめると以下のようになります。

国内源泉所得国外源泉所得
居住者要申告タイへ持ち込んだものは要申告
非居住者要申告不要

 従来、国外源泉所得については、「所得を獲得した年度と同年度にタイへ持ち込んだもの」のみが申告対象でしたが、2023年に発出された歳入局通達161、162号により、同年度でなくとも、2024年1月1日以降にタイへ持ち込んだ所得については課税対象となりました。なお、2024年1月1日より前に獲得した国外源泉所得については、2024年度以降にタイへ持ち込んでも申告の必要はないとされています。

2.申告が必要となる所得

 タイ国内源泉所得とは、「タイ国内の職位・職務による所得」、「タイ国内の事業所または事業から生じる所得」、「タイ国内に所在する資産から生じる所得」をいいます。当該所得の受領地は問いません。

 原則として、タイ法人が負担する所得については月次の給与源泉税申告(PND.1)において、日本法人が負担する所得については翌年3月の確定申告(PND.91)において、個人所得税の申告を行います。日本法人が駐在員へ支払い、その後タイ法人へ立替請求を行う所得については、月次の給与源泉税申告に含めての申告が必要です。
 申告対象となる所得とは、主に以下のようなものが該当します。
   Ø  タイ法人が支給する給与、各種手当(通勤手当も課税対象)、賞与
   Ø  タックスオンタックスなど、法人が駐在員の所得税を負担するもの
   Ø  法人が負担する駐在員の家賃
   Ø  社用車にかかる費用のうち、個人使用部分
   Ø  法人が負担する駐在員子女の学費
   Ø  日本法人が支給する給与、各種手当、賞与等のうち、タイ国内での職務に対するもの

 月次の給与源泉税申告で個人所得税を全て申告・納税している場合でも、確定申告を行うことが義務づけられています。

 期の途中での帰任や、追加で所得控除を使えるようになったなどで個人所得税が過払いになった場合、確定申告において還付申請を行うことが可能です。

3.所得税の計算

個人所得税率は、日本と同じ累進課税方式となっており、最高税率は35%です。

所得額(バーツ)所得税率所得税額(バーツ)累計所得税額
150,000まで0%
150,000超~300,000まで5%~7,5007,500
300,000超~500,000まで10%7,500~20,00027,500
500,000超~750,000まで15%20,000~37,50065,000
750,000超~1,000,000まで20%37,500~50,000115,000
1,000,000超~2,000,000まで25%50,000~250,000365,000
2,000,000超~5,000,000まで30%250,000~900,0001,265,000
5,000,000超35%900,000~1,265,000~

 年収額より所得控除を差し引き、それに上記の税率を当てはめ所得税の計算を行いますが、一般的な日本人駐在員に適用できる所得控除は、本人控除(6万バーツ)、経費控除(上限10万バーツ)、配偶者控除(6万バーツ)、子供控除(3万バーツ/人。2018年以降出生の第二子からは6万バーツ/人)と多くありません。

 一例として、年収240万バーツ(1,000万円程度:4.16円/バーツ)、単身者、所得税は本人負担として試算する場合、年間の個人所得税は437,000バーツ(約182万円)となります。日本と異なり住民税はありませんが、所得税の負担は日本と比較すると重くなる傾向のため、駐在員の所得税の全部または一部を会社負担とされることが多くあります。なお、この例で所得税を会社負担のタックスオンタックスで計算する場合、所得税額は約625,000バーツ(約260万円)となります。

4.日本からの出張者の所得について

 本社からの出張者の所得については、日タイ租税条約の3要件全てを満たす場合、日本で申告することになります。
 3要件とは以下となります。
(a) 報酬又は所得の受領者が当該年を通じて合計180日を超えない期間当該他方の締約国内に滞在すること。 (=タイの居住者に該当しないこと)
(b) 報酬又は所得が当該一方の締約国の居住者又はこれに代わる者から支払われるものであること。 (=出張者の所得が日本本社から支払われること)
(c) 報酬又は所得が当該他方の締約国において租税を課される企業によって負担されるものでないこと。 (=出張者の所得をタイ法人が負担しないこと)
 3要件のうち1つでも満たさない場合、当該出張者の所得をタイで申告する必要がありますのでご留意ください。

―免責事項―

本記事の内容は、掲載時点の法令等に基づいて作成しております。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の会計・税務・法務その他の専門的助言を提供するものではありません。会計・税務・法務に関する具体的な取扱いについては、個別の状況に応じてご相談ください。

また、法令の改正や制度変更等により、本記事の内容が将来において必ずしも適用されない場合がありますので、あらかじめご了承ください。

なお、本記事の内容の無断転載・無断使用はご遠慮ください。