メキシコの税務上のインフレ調整について
はじめに
2023年も後半となり年度決算も近づいてきました。この度はメキシコにおける税務調整の重要なポイントである税務上のインフレ調整について記載していきます。メキシコにおいて経済の変動とともに企業の経営状況を反映させるための税務上では主要な項目へインフレ調整が必要となっています。この調整は、正確な財務情報の提供と税負担の公平性を確保するためのもので、企業へのインパクトも大きく、重要な税務調整のひとつです。
インフレ率とは
税務上のインフレ調整の基礎となるインフレ率は、メキシコの統計局や中央銀行が公表する年間の消費者物価指数 (CPI)に基づいています。この数値は、経済内の物価の変動を示す主要な指標で、企業においても様々なファクターへ影響するものです。
貨幣性資産及び貨幣性負債の調整
「貨幣性資産」及び「貨幣性負債」という言葉は聞き慣れないものかと思いますが、それぞれ現金や短期の債権などの金銭として即時に取得可能な資産を指し、対照的に、貨幣性負債は短期間内に支払いが予定されている債務や金銭上の義務を示しています。これらの資産及び負債の年間平均のネット額にインフレ率をかけ、資産が負債より多ければ損金へ、負債が資本より多ければ益金へ税務上調整されることになります。
特に、貨幣性負債の多い企業は、税務上の所得が増加することになり、それに伴い法人税の負担が増加することになります。ついてはご自身の会社の貨幣性の資産及び負債の額にご注意いただく事が重要です。
インフレーション調整
メキシコの場合、通貨価値が比較的変動しやすい為、毎年の税務申告において、インフレ損益計算を行い、課税所得に加減算をします。
例)
- 貨幣性資産(Ex:銀行預金、売掛債権、未還付税金など)
- 貨幣性負債(Ex:買掛債務、未払い金、未払い税金、借入金など)
| 債権>債務 | 債権<債務 |
|---|---|
| インフレーション率:5% <日次の債権債務残高平均額> 現金預金:500 売掛金:1,000 買掛金:900 | インフレーション率:5% <日次の債権債務残高平均額> 現金預金:500 売掛金:1,000 買掛金:1,900 |
| ・債権(1,500)-債務(900)=600 → 債権額が大きく、損金発生 ・600×5%=30 → 30の損金が生じる ・30×30%(法人税率)=9 → 9だけ税金額が少なくなる | ・債権(1,500)-債務(1,900)=△400 → 債権額が大きく、益金発生 ・400×5%=20 → 20の益金が生じる ・20×30%(法人税率)=6 → 6だけ税金額が増える |
| ※税金が減る | ※税金が増える 実際インフレ分負債が多いはずなのに、会計は少なく抑えている。実際の数値より会計が良くなっているので、インフレ分は実質の利益であると考え、税金を増やす。 |
固定資産と減価償却費のインフレ調整
税務上のインフレ調整は固定資産や減価償却費にも影響を及ぼします。固定資産の価値はインフレの影響を受けるため、その帳簿価格の調整が必要となります。また、減価償却費もインフレ率に基づいて再計算され税務調整の対象となります。
繰越欠損金のインフレ調整の対象
繰越欠損金もインフレ調整の対象となります。メキシコにおいては繰越欠損金は過年度に遡ってインフレ調整される為、昨年度と今年度の繰越欠損金が同額であったと仮定しても、昨年度の繰越欠損金と今年度の繰越欠損金ではインフレ分が膨らむという事になります。
結び
メキシコにおける税務上のインフレ調整は、日本には考え方がないもので理解が進まないものであろうかと思います。しかし冒頭でも述べた通り、インフレ調整は企業の税務計算に大きな影響を与えるものでありますので、正しく理解してご自身の会社でタックスプランニングを行う事が重要であると考えます。
―免責事項―
本記事の内容は、掲載時点の法令等に基づいて作成しております。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の会計・税務・法務その他の専門的助言を提供するものではありません。会計・税務・法務に関する具体的な取扱いについては、個別の状況に応じてご相談ください。
また、法令の改正や制度変更等により、本記事の内容が将来において必ずしも適用されない場合がありますので、あらかじめご了承ください。
なお、本記事の内容の無断転載・無断使用はご遠慮ください。