ベトナムにおける直接投資資本口座(DICA)の利用
ベトナムへ外国直接投資を行う際は、各種規制や手続きが求められるが、中央銀行通達「06/2019/TT-NHNN」では、外資企業が遵守すべき外国為替管理に関するガイダンス(従来の規定の更新版)が定められており、その中で「DICA(直接投資資本口座)」の開設および利用が義務付けられている。本記事では、DICAが求められるFDI企業の定義や、DICAを通じて行わなければならない取引について解説する。
DICA(Direct Investment Capital Account)とは
DICAの概要
DICAは「Direct Investment Capital Account」の略称であり、日本語では「直接投資資本口座」または「資本金口座」と呼ばれる。これは、外国投資家がベトナムでの投資関連取引を行うため、ベトナムの銀行で開設する外貨またはベトナムドン建ての当座預金口座を指す。
開設の基本形態
多くの場合、外資企業を設立する際に発行される投資登録証明書(IRC)に記載された出資通貨(外貨)に従い、外貨建てのDICAが開設される。
外国直接投資企業(06/2019/TT-NHNN 第3条第2項)
DICA開設義務のある「外国直接投資企業(FDI企業)」としては、以下の類型が該当する。
- 投資登録証明書の発給が必要な企業
投資法に基づき設立され、出資者や株主に外国投資家が含まれ、投資登録証明書(IRC)の交付を要する企業。 - 外国投資家による出資比率が51%以上となる企業
以下のいずれかを通じて、外国投資家が定款資本の51%以上を有する企業。
o 外国投資家が追加出資・株式購入・持分取得を行い、持分比率が51%以上となった場合(投資分野に条件がある場合、またはない場合を問わない)
o 分割、吸収、合併などの組織再編により、外国投資家が51%以上の持分比率を有することとなった場合
o その他特定の法律に従って新たに設立される企業で、外国投資家が51%以上を有する場合 - PPPプロジェクト企業
上記いずれかに該当する企業は、DICAを開設し、適正に資本や投資収益の入出金を行うことが求められる。DICAの開設は、民間銀行で比較的容易に行うことが可能である。
DICAを通じて行うべき取引(06/2019/TT-NHNN 第6条・第7条)
通達「06/2019/TT-NHNN」によれば、FDI企業は以下の主要な取引をDICAを通じて行う必要がある。
• 外国投資家からの出資受入れ
外国投資家がFDI企業に出資金を送金する際には、DICAを介して送金を受ける必要がある。
• 外国当事者との借入・返済取引
対外国債権・債務関係(借入や返済)について、FDI企業はDICAを利用して資金移動を行う。
• 税引後利益の海外への送金
FDI企業は、事業活動により獲得した税引後利益を海外へ送金する際、DICAを経由することが義務付けられている。
• ベトナム居住者・非居住者間の持分譲渡
ベトナム居住者・非居住者間で持分譲渡を行う際は、その決済にあたって、いったんDICAを経由する必要がある。
まとめ
ベトナムでのFDI活動には、DICA口座の開設および利用が不可欠である。DICAは、外国投資家からの出資受入れや海外への利益送金など、FDI企業にとって重要な資金フロー管理手段となる。通達06/2019/TT-NHNNを遵守することで、適正な外国為替管理が行われ、投資家・企業双方にとって、より透明かつ安全な投資環境が整備されているといえる。
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