アメリカの新関税政策によるベトナム経済への影響
相互関税
2025年4月2日、トランプ米大統領は、全ての米国向け輸出国に対して最低10%の関税を課す方針を発表した。また、対米貿易黒字の大きい約60の国・地域にはさらに高い関税率を適用すると述べ、国際貿易体制への最大規模の対抗措置となる。発表された関税率では、中国に追加34%(合計54%)、EUは20%、日本は24%、そしてベトナムには**46%**が課される見通しとなっている。この措置は、トランプ氏が長年「不公平」と批判してきた世界の貿易慣行に対し、大きな圧力をかける内容となっている。
ASEAN新興国の中でもベトナムは異常に高い税率となっているが、これはベトナムを迂回しての輸出を行う中国企業潰しを企図していると言えよう。一方で、アメリカ政府からの公式発表はないが「貿易黒字 ÷ 輸出額 」の半分として今回の各国の関税率が計算されているとの情報もある(ベトナムの場合、1105 ÷ 1195 =92%、その半分が46%)。関税率を決定するにあたり、この計算式に論理性があるとは言えず、今後の対応によって変動していく可能性もうかがえる。
参考:2024年の米越貿易収支(ベトナム税関総局データ)
①ベトナムからアメリカへの輸出額:1195億ドル
②ベトナムのアメリアからの輸入額:90億ドル
③貿易収支(ベトナムの貿易黒字):1105億ドル
ベトナム経済への影響
ベトナムは中国や国内で調達した原料を加工してアメリカや中国へ輸出する加工貿易国として急速に経済発展をしており、対米黒字額としては世界第4位に位置する。アメリカへの輸出額は輸出全体の3割を占め、GDPへの寄与度も同じく3割をほどを誇ると言われている。
2023年度はアメリカのインフレによる政策金利上昇(その他中国の不動産バブル崩壊)の影響で世界経済の景気回復が膠着し、ベトナムの総輸出額が前年比マイナス4%となり、これを主要因として年間GDP成長率が5%と低迷した。
今回の相互関税下では2023年に匹敵する悪影響がベトナム経済に及ぶかも知れない。個別の品目ごとの税率構成はいまだ不明であるが、ベトナムの主力輸出品である電子・電気製品、繊維、衣料品に相応の追加関税が課される場合、漏れなく価格圧力がかかり、輸出低迷により国内需要に波及するとみられ、年初に政府が掲げているGDP成長率7%の達成には非常に強い懸念がある状況になると言えよう。
ベトナム政府の対応
2025年3月31日にアメリカからの自動車、木製製品、エタノール、LNG、一部の食品などの関税率の緩和を施行しており、これは今回のトランプ関税のための事前施策と考えられる(これは結果として功を奏しなかったかも知れない)。上述のように相互関税率46%は今後の展開に応じた流動的なものである可能性もあり、このようなベトナム側の関税率の緩和などによる、国としての対応によりアメリカ関税率の低下をベトナム政府は目指していくと考えられる。また、経済安全保障の文脈で中国への投資がベトナム投資に振り替えられることで、近年のベトナムは高い外国直接投資を享受してきたが、これが途絶えないような対策も必要となる。
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