ベトナムの退職金制度
ベトナムでは、12か月以上勤務した労働者に対して、その勤続年数に応じた退職金を支給しなければならないと規定されている(2019年労働法46条、47条)。一方、労働者が社会保険(失業保険)に加入していた場合、その加入期間については会社による退職金の支給対象期間から控除されるとされている。
言い換えると、勤続年数のうち、失業保険の加入期間については社会保険から失業保険金が支給され、失業保険の未加入期間についてのみ会社から退職手当が支給される制度となっている。
具体的には下表のような制度となっている。
| 退職のタイプ | 社会保険加入の期間 (=社会保険が手当を支給) | 社会保険未加入の期間 (=会社が手当を支給) |
|---|---|---|
| 合意退職(自主退職) 契約期間満了による退職 使用者による解約(2019年労働法36条)など | 支給月額: 給与(*1) x 60% (*2) 支給月数: 3~12か月分 (*3) (雇用法38/2013/QH13 50条1項2項) (*1)社会保険(失業保険)に適用される直近6か月の平均月給 (現在の上限額は月99,200,000 VND)。 (*2)支給月額は最低賃金の5倍を上限とする。 (*3)失業保険に加入後12~36か月間については3か月、 その後12か月毎に1か月追加、最大月数は12か月。 退職から3か月以内に社会保険に申請する必要があり、 申請後15日間は次の就職をしてはならない。 原則として本人が社会保険局に出向いて申請する。 | 支給月額: 給与(*4) 支給月数: 勤務年数 x 0.5 (*5) (2019年労働法 46条) (*4)直近6か月の雇用契約上の平均月給 (*5)勤務年数に6か月以下の端数がある 場合は0.5年として、6か月超の端数がある 場合は1年として算入する。 (政令145/2020/NĐ-CP 8条3項c) 退職後14日以内(最大30日まで 延長可能)に退職手当を支払う 必要がある。 |
| 整理解雇等 (2019年労働法42条、43条) | 基本的に上記の合意退職等の内容と同一である。 (2019年労働法47条2項) | 支給月額: 給与(*4) 支給月数: 勤務年数 x 1 (*5) (最低2か月) (2019年労働法 47条) |
| 懲戒解雇等 (2019年労働法125条) | 法定給付なし | 法定給付なし(ただし場合による) |
現行法上、2016年1月1日以降は原則として全ての従業員に社会保険加入が義務化されている。社会保険は①健康保険、②社会保険(狭義)、③失業保険から構成されている。このため、基本的には全ての従業員について退職時に失業保険基金から失業手当が支給されることになる。一方、社会保険加入義務の例外として以下のようなものがあり、該当する期間・人物については会社側が退職手当・失業手当を負担しなければならない規定となっている。
<失業保険の加入義務の例外>
・2016年1月1日より前から勤続しており、勤務開始~2015年12月31日までの期間に失業保険に加入していない従業員
・試用期間に失業保険に加入していない場合(試用期間は社会保険加入は任意)
・産休(産休中は社会保険未加入となる)
・外国人労働者(外国人は失業保険には加入できない)
また、現地ローカル企業の場合、上述の加入義務にもかかわらず従業員を社会保険に加入させていないケースがある。このようなローカル企業を日系企業が買収した場合、その後の従業員の退職時に会社が退職金を負担しなければならなくなるケースがあり得るため、留意が必要である。
なお外国人労働者は上述のように「失業保険」には加入されないため、失業手当が社会保険から支給されることはない。一方、社会保険(狭義)の一部である「退職年金」には加入している(2022年度より原則として加入しなければならなくなった)ため、外国人労働者がベトナムの会社を退職した場合には社会保険一時金(退職年金の一時金としての支払い)が受給できる可能性があることから、留意が必要である(政令143/2018/ND-CP第9条第6項)。
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